特定商取引法(旧称「訪問販売法(訪問販売等に関する法律)」)は、訪問販売や通信販売等、以下に挙げる消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルールを定めています。
これにより、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守るための法律です。
長期・継続的な役務(「えきむ」と読み、いわゆるサービスを意味します)の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと。
現在、エステティックサロン、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の6つの役務が対象とされています。
「役務(えきむ)」とはいわゆるサービスのことで、「特定継続的役務」とは、政令で定める「特定継続的役務」(※)を、一定期間を超える期間に渡り、一定金額を超える対価を受け取って提供することを意味します。
これには役務提供を受ける権利の販売も含まれ、「特定権利販売」と呼ばれます。上記要件に該当すれば、店頭契約も規制対象となります。
※「特定継続的役務」とは、役務提供を受ける者の身体の美化、知識・技能の向上などの目的を実現させることをもって誘引されるが、その目的の実現が確実でないという特徴を持つ有償の役務のことを意味します。
特定継続的役務 | 期間 | 金額 |
---|---|---|
いわゆるエステティックサロン 人の皮膚を清潔にしもしくは美化し、体型を整え、または体重を減ずるための施術を行うこと |
1月を超えるもの | いずれも5万円を超えるもの |
以下の場合などには、特定商取引法が適用されません。
■事業者間取引の場合
■海外にいる人に対する契約
■国、地方公共団体が行う販売または役務の提供
■特別法に基づく組合、公務員の職員団体、労働組合がそれぞれの組合員に対して行う販売または役務の提供
■事業者がその従業員に対して行った販売または役務の提供の場合
特定商取引法は、事業者が特定継続的役務提供(特定権利販売)について契約する場合には、それぞれ以下の書面を消費者に渡さなければならないと定めています。
A.
契約の締結前には、当該契約の概要を記載した書面(概要書面)を渡さなくてはなりません。
「概要書面」には、以下の事項を記載することが定められています。
1.事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
2.役務の内容
3.購入が必要な商品がある場合にはその商品名、種類、数量
4.役務の対価(権利の販売価格)そのほか支払わなければならない金銭の概算額
5.上記の金銭の支払い時期、方法
6.役務の提供期間
7.クーリング・オフに関する事項
8.中途解約に関する事項
9.割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
10.前受金の保全に関する事項
11.特約があるときには、その内容
B.
契約の締結後には、遅滞なく、契約内容について明らかにした書面(契約書面)を渡さなければなりません。
「契約書面」には、以下の事項を記載することが定められています。
1.役務(権利)の内容、購入が必要な商品がある場合にはその商品名
2.役務の対価(権利の販売価格)そのほか支払わなければならない金銭の額
3.上記の金銭の支払い時期、方法
4.役務の提供期間
5.クーリング・オフに関する事項
6.中途解約に関する事項
7.事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
8.契約の締結を担当した者の氏名
9.契約の締結の年月日
10.購入が必要な商品がある場合には、その種類、数量
11.割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
12.前受金の保全措置の有無、その内容
13.購入が必要な商品がある場合には、その商品を販売する業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
14.特約があるときには、その内容
特定商取引法は、誇大広告や著しく事実と相違する内容の広告による消費者トラブルを未然に防止するために、役務の内容などについて、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものより著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています。
特定商取引法は、特定継続的役務提供における、以下のような不当な行為を禁止しております。
■契約の締結について勧誘を行う際、または締結後、その解除を妨げるために、事実と違うことを告げること
■契約の締結について勧誘を行う際、または締結後、その解除を妨げるために、故意に事実を告げないこと
■契約の締結について勧誘を行う際、または締結後、その解除を妨げるために、相手を威迫して困惑させること
「前払方式」で5万円を超える特定継続的役務提供を行う事業者に対しては、消費者が事業者の財務内容などについて確認できるよう、その業務および財産の状況を記載した書類(貸借対照表、損益計算書など)を用意しておくことや、それを、消費者の求めに応じて、閲覧できるようにしておくことが義務づけられます。
特定継続的役務提供の際、消費者が契約をした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日間以内であれば、消費者は事業者に対して、書面により契約(関連商品※の販売契約を含む)の解除(クーリング・オフ)をすることができます。
なお、平成16年11月11日以降の契約については、事業者が、事実と違うことを告げたり威迫したりすることにより、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフをしなかった場合には、上記期間を経過していても、消費者はクーリング・オフをできます(クーリング・オフを行う際には、後々のトラブルをさけるためにも特定記録郵便、書留、内容証明郵便などで行うことが薦められます)。
クーリング・オフを行った場合、消費者がすでに商品もしくは権利を受け取っている場合には、販売業者の負担によって、その商品を引き取ってもらうことおよび権利を返還することができます。また、役務がすでに提供されている場合でも、消費者はその対価を支払う必要はありません。また、消費者は、損害賠償や違約金を支払う必要はなく、すでにに頭金など対価を支払っている場合には、すみやかにその金額を返してもらうことができます。
ただし、使うと商品価値がほとんどなくなる、いわゆる消耗品(いわゆる健康食品、化粧品など)を使ってしまった場合には、クーリング・オフの規定が適用されません。
※「関連商品」とは、特定継続的役務の提供の際、消費者が購入する必要がある商品として政令で定められている商品のことです。消費者が本体の特定継続的役務提供など契約をクーリング・オフ(または中途解約)した場合には、その関連商品についてもクーリング・オフ(または中途解約)することができます。具体的には、以下のものが関連商品として指定されています。
エステティックサロンについては
・いわゆる健康食品
・化粧品、石けん(医薬品を除く)および浴用剤
・下着類・美顔器、脱毛器
消費者は、クーリング・オフ期間の経過後においても、将来に向かって特定継続的役務提供など契約(関連商品の販売契約を含む)を解除(中途解約)することができます。その際、事業者が消費者に対して請求し得る損害賠償などの額の上限は、以下の通りです(それ以上の額をすでに受け取っている場合には、残額を返還しなければなりません) 。
A.契約の解除が役務提供開始前である場合
契約の締結および履行のために通常要する費用の額として役務ごとに政令で定める以下の額。
エステティックサロン⇒2万円
B.契約の解除が役務提供開始後である場合(aとbの合計額)
a 提供された特定継続的役務の対価に相当する額
b 当該特定継続的役務提供契約の解除によって通常生ずる損害の額として役務ごとに政令で定める以下の額
エステティックサロン⇒2万円または契約残額※の10%に相当する額のいずれか低い額
※「契約残額」とは、契約に関する役務の対価の総額から、すでに提供された役務の対価に相当する額を差し引いた額のことです。
平成16年11月11日以降の契約については、事業者が契約の締結について勧誘を行う際、以下の行為をしたことにより、消費者がそれぞれ以下の誤認をすることによって契約の申込みまたはその承諾の意思表示をしたときには、その意思表示を取り消すことができます。
1.事実と違うことを告げられた場合であって、その告げられた内容が事実であると誤認した場合
2.故意に事実を告げられなかった場合であって、その事実が存在しないと誤認した場合
役務提供事業者または販売業者が以下の行為を不特定かつ多数の者に、現に行い、または行うおそれがあるときは、適格消費者団体は、各事業者に対し、行為の停止もしくは予防、その他の必要な措置をとることを請求できます。
1.誇大な広告等を表示する行為
2.契約を締結するため、勧誘するときに、事実と違うことを告げる行為
3.契約を締結するため、勧誘するときに、故意に事実を告げない行為
4.契約を締結するため、または解除を妨げるため、威迫して困惑させる行為
5.消費者に不利な特約、契約解除に伴う損害賠償額の制限に反する特約を含む契約の締結行為(関連商品販売契約については、関連商品の販売を行うものによる行為)